「親の責任」論がなぜこんなに根強いのか

親や家庭の影響力を過大評価しすぎなのではないかと思っています。

成人してからの犯罪に親にも責任があるように見なすのは論外ですが、子どもであっても何か悪いことをしたら「親のしつけが悪い」という見方をすることには疑問を覚えます。

現代の家庭は規模が小さすぎるので、家庭で何か身につけたとしても社会に出たら別の行動を取ることが多いからです。それよりも影響力が大きいのは自分が所属している仲間(ピアグループ)です。

全くの予想にすぎないのですが、「教育は社会全体の責任」だったのが変化して「教育は親の責任」にすり変わっていったのではないかと思っています。

かつては社会全体が家庭だったはずです。年齢もバラバラな数十人のグループで子どもを保育・教育していました。その大きなピアグループの中で許されること許されないことを学び、それらのルールはグループの中で適用されます。

ですから、そのグループのルールに違反するのはグループ全体、つまり社会全体の責任だったのだと思います。

重要なのは、グループの中で学んだルールはそのグループでのみ通用するもので、同じ人間でも別のグループに入ると別のルールで行動するということです。

やがて大きな家庭はどんどん小さくなって、最終的に核家族になります。そして家庭と家庭以外に大きな壁ができてしまったと考えられます。小さな家庭でのルールは家庭内でのみ適用され、外に出て別のピアグループの中に入ると別のルールを身につけます。

このような原理で、家庭でしつけや教育をしても外の社会で同じ行動を取るケースはかなり限られてくると思います。

良い面でも悪い面でも、家庭での教育が外の社会での行動に及ぼす影響は、われわれが考えているよりもずっと小さいのではないかと考えています。