家庭という閉鎖空間

子育てをする上で親のもつ影響力はゼロに近いほど非常に小さいという新しい説が提唱されています。

その根拠の一つとして、家庭という小さなプライベート空間で教えられたことは家庭の中でのルールであって、外に出た時は同じように行動しないというものがあります。赤ちゃんは生後数ヶ月ですでに「状況が変われば行動を変える」ということを覚えているそうです。

ある状況でする行動は、別の状況ではその行動をしないということです。これは家庭でやっていることを別の状況ではやらないということです。たとえば母親が「歯を磨きなさい」と教えたとしても、外に出て別の状況になった時にはやらないということです。

もし外の世界で、たとえば小学校で他の友達が歯を磨いているということを知った時には自分も歯を磨くようになります。このプロセスを経て、家庭でも外でも歯を磨くという習慣が獲得されます。

これらは特殊なことではなく、私達にも身に覚えがあることです。家庭内でのローカルルール、例えば納豆に砂糖をかけて食べるというようなことを、小学校の友人に話すのに壁を感じたことがあるのではないでしょうか。家でやっていることを他の人はやっていないのではないか、隠しておいた方がよいのではないかと考えてためらった経験はないでしょうか。

これは家庭と外の世界に大きな障壁が存在することを示しています。その障壁によって、家庭内で教えられたことは世界に出た時にはさほど影響力を持たないのだというのです。