人間界は弱肉強食なのか

つい弱肉強食という言葉を都合よく使ってしまったな、と思うことがあります。
都合の良い時にだけ弱肉強食という思考を持ち出すことのないように気をつけなければと感じました。

たとえば能力の低い人間は収入の少ない仕事にしか就けないのも仕方ないとか、そういった思考です。

自然の摂理であるから仕方ないように捉えられますが、実は暴力的な思考であることを理解する必要があります。
どれだけ説得力のある言葉であっても、力の強いものが弱いものをねじふせることに変わりはないからです。

なぜなら人間界に弱肉強食の原理を適用するのは少し無理があるからです。

まず、人間は飢えていないからです。
弱いものを食べなければいけないほど飢えてはいないのです。
動物界であれば、弱いものを殺して食べなければ生命を維持することができません。
それだけの強い理由があるということです。

次に、動物の場合、弱肉強食といっても違う種同士の闘いだということです。
違う種を食べますが、これもある意味同じ種が繁栄するためです。
人間同士の弱肉強食で潰し合いをすることはあまり意味がありません。

そして何よりも、弱肉強食の枠組みで生きなければいけないほど我々は切羽つまっていないということです。
いま日本人は基本的に生命の危険を感じずに、安定した生活を送っています。
弱者に手を差し伸べるだけの余裕を誰もが持っているはずです。
弱肉強食という思考は余裕のない、ある意味ではかっこわるい思考なのかもしれないと最近気づきました。

軽い気持ちで使ってしまいがちな弱肉強食という言葉ですが、少し思いとどまってみた方がよいのかもしれません。