名前を奪えば深く考えられる

何かに名前がついているということは非常に重要なことです。心の安全ブレーキになります。

たとえばどこか体調が悪い時に、病院に行って「胃腸炎です」と病名を言ってもらえればそれだけでほっと安心できるというようなことです。

良い意味では心の安定を保つ働きがあります。たくさんの病気や病名を細かく定義したということは西洋医学の大きな貢献です。東洋医学においては病名ではなく、人間としての状態によってシンプルに分類します。

名前をつけるということは、悪い意味では思考がストップする方向に働きます。名前をつけることで、自分の問題ではなく何か別の力が働いているかのように考えることができてしまいます。

自虐的に「自分はバカだから」というように自分を表現するのがその例です。「バカ」という名前をつけることで、現実的な課題を放棄してしまうことができるんですね。

その構造を踏まえて、何かを深く考えたい時には、その名前を奪ってみると良いと思います。名前なしに表現するとしたら、どのように表現することができるでしょうか。

コーチング的にはチャンクダウンと呼ばれるテクニックです。たとえば「忙しい」という悩みがあるのであれば「忙しい」とは何をそう呼んでいるのか深堀りしていくということです。

「忙しい」という名前を奪うと、今の自分をどういう風に表現できるか、自分がどうとらえているのかを考えることができます。

自分の課題と向き合い、深く考えるためには名前を奪うというのも一つの思考法なのではないかと思っています。